スピノザの本を読んでみた

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読んだ本

  • 『はじめてのスピノザ』 自由へのエチカ
    • 講談社現代新書
  • 『中動態の世界』 意志と責任の考古学
    • 医学書院

はじめてのスピノザ

この本では、選択されなかったもうひとつの近代としてスピノザの思想を紹介している。コナトゥスという言葉が面白くて、これは、「個体をいまある状態に維持しようとして働く力」のことを指す。コナトゥスは自分の存在に固執する力のことで、社会を営む上でもそれぞれが一人ひとりのコナトゥスを大事にする必要がある。

「自分を知ることは自分に何らかの変化をもたらします。つまり、何かを認識すること、心理を獲得することは、認識する主体そのものに変化をもたらすのです。」「スピノザにおいて、真理の獲得は一つの体験としてとらえられているわけです。」

「スピノザのさまざまな概念、すなわち、組み合わせとしての善悪、力としての本質、必然性としての自由、力の表現としての能動、主体の変容をもたらす心理の獲得、認識する力の認識……」

中動態の世界

この本では、ギリシャ語などに見られる中動態という概念について、説明している。これは主語をその動作の座とするもので、自分が巻き込まれているものを表す。最初に中動態があり、そこから能動態、そして受動態が派生したという推測をしている。 この文法の話がまずとても面白い。使役や中動態となるものが今でも名残として見られるといて面白い。また、この中動態を切り口に、フーコーの権力論をきれいに読み解いている。

まとめ

主体や意志はたぶんに虚構的なもので、完全な自由意志なんてものがないという話は以前からされていたが、スピノザの思想を通してそれを考えると、より深く理解できるような気がした。国際協力の分野でも、スピノザの思想は重要な位置を占めているようで、自由意志の疑わしさ、真理は体験として存在するといった視点をもって活動するとよいように思った。

イラスト

イラストは汎神論のイメージをChatGPTに描いてもらったもの。